大地や雪の下の鼓動を聴き、その地脈、水脈を繋いでゆく。するとフォークロアの声が伝統からはみでて、現代のフォークソングとして甦る。これはユーラシア大陸と日本のアーチストとのコラボレーションから生まれた、これまでに存在しなかった音楽だ。
Min-a Ji from Korea
ジー・ミナ
ジー・ミナは韓国の宮廷音楽の「正歌」を専門にする若き歌手だ。それは世界に衝撃を与えたサムルノリやパンソリなどの豊かな民衆の伝統芸能とも異なる声。永遠を願う宮廷の貴族たち生活の死生観が反映され、きわめてゆっくり唄われる。しかし本アルバムでは悠久の時を唄うこの歌唱法と現代的なアンサンブルの融合により、むしろ民衆のフォークロアの精神を現代に甦らさせることを試みた。
素材は、古い葬列歌や子守唄、パンソリ、北朝鮮の歌謡や、済州島の舟歌..それらがさらに琉球やアイヌ文化、モンゴルの遊牧文化や南洋の海洋文化にも接続する。それらには庶民の死生観があらわれる。ロシアや中央アジアに暮らす「高麗人(コリョサラム)」といわれるコリアン・ディアスポラの存在も描かれる。
アルバムの軸となるプロットは、ロシア、カザフスタン、日本、韓国の音楽家やダンサーによるコラボレーション作品「さんしょうだゆう」だ。日本の説経節、安寿と厨子王の「山椒大夫」とパンソリ「沈清歌」、両国の口承芸能を繋ぐ試みでもあった。民衆に愛された古い物語の登場人物たちが、宮廷国楽の若き歌い手の静けき声の中に蘇り、魂の拠り所を失ってさまよう現代人の心を鎮める。
1 Before Darkness 暗くなる前に
2 View from the Ship 船からの眺め
3 Reincarnation from a Lotus Flower 蓮の華から
4 Jeju Lullaby and Okinawa Balsam 済州島の子守唄~てぃんさぐぬ花
5 North Korean Lullaby 北朝鮮歌謡 子守唄
6 Song for Literal Action まつろわぬものたちが
7 An Korean Elegy from «ShimCheong-ga» 挽歌「沈清歌」より
8 A korean Funeral Song 葬列の歌(江原道の「香頭歌」)
9 Eurasian Sinawi ユーラシアン・シナウィ
10 In a Day of My Father’s Memory Part Ⅱ 父の記憶の日 2
11 Voices of Diaspora 故国山川
12 About Sleep from Old Ainu Lullaby 眠りのお船がおりたぞ
13 Live forever 千千萬萬歳(青いその波を)
14 The Beautiful Grandeur of Nature 美しき天然(コブス独奏)
15 Korean Lullaby 韓国の子守唄
歌:ジー・ミナ
青木菜穂子(ピアノ)河崎純(コントラバスほか) 熊坂るつ子(アコーディオン)近藤秀秋(ギター、薩摩琵琶ほか)崔在哲(韓国打楽器、歌)高岸卓人(ヴァイオリン) 髙橋奈緒(ヴァイオリン) 松本ちはや(打楽器)森口恭子(ヴィオラ)
山本徹(チェロ) 渡部寿珠(フルート、ピッコロ) セルゲイ・レートフ(サックス) ヌルヒャン・ラフムジャン(ドンブラ・コブス)
声・コーラス: マリーヤ・コールニヴァ、三浦宏予、吉松章、サインホ・ナムチラク、サーデット・チュルコズ、三木聖香
作曲・編曲:河崎純
Marya Korneva from Russia
マリーヤ・コールニヴァ
シベリアのバイカル湖には、先住のブリヤート族のシャーマニズムの聖なる島が浮かんでいる。バイカルの畔、イルクーツクで生まれ育った歌手マリーヤ・コールニヴァは、多くの民族が往来したこの大地で、さまざまな文化を吸収しながら育ち、現在もここで暮らしている。
本作は神話、伝説、歴史の断片が折り重ながら、弦楽四重奏やエレクトロニクス、邦楽器、伝統楽器によるアンサンブルが絡み合う。このアルバムは3つのシーンで構成されている。これはバイカル湖のセイレーンの声で大地に潜んでいた言葉たちを歌う、ユーラシアの詞華集だ。歌声が伝説の湖底都市を遊泳し、ユーラシアの空に飛翔する。
1)歌手のルーツでもある、宗教改革で迫害されたロシア正教「古儀式派」の聖なる湖底都市「キーテジ」伝説。歴史に表れない日本との謎めいた交流。
2)韓国にルーツを持つウズベキスタン人とサハリンの現代詩人がロシア語で書いた、伝統的な韓国やロシアの神話の世界。
3)時代の過酷な変動を生きぬいた、アンナ・アフマートヴァたい女性詩人の言葉。
< Act 1> Mysterious Relationship
1 Two folk songs 二つのフォークソング
2 Lake Svetloyar 聖なる湖・スヴェトロヤール
3 Traveler’s guide to Japan 日本国への旅案内
<Act 2> Voices of Diaspora from Eurasian Opera “Sansyo the Bailiff”
4 String quartet 1 Sea of Japan<East Sea> 弦楽四重奏曲No.1 日本海
5 Korean Sea spirit, Ino 海の精イノ
6 String quartet 2 Ainu Kotan, Hokkaido 弦楽四重奏曲No.2 アイヌ・コタン・北海道
7 String quartet 3 Sakhalin and Arirang 弦楽四重奏曲No.3 サハリン・アリラン
8 By the Wild Steppes of Transbaikalia バイカル湖のほとり
9 String quartet 4 Chechenya 弦楽四重奏曲No.4 チェチェン・カザフスタン
10 Eurasian Sinawi «Father’s Will» ユーラシアン・シナウィ
11 Two Lullabies~12 Aryon 二つの子守唄 ~幼子の魂
13 String quartet 5 Korea 弦楽四重奏曲No.5 韓国
<Act 3> Poets
14 Our first Song 1 私たちははじめて聴くのだ歌というものをⅠ
15 Kitezhanka 湖上都市キーテジで
16 Our first Song Ⅱ 私たちははじめて聴くのだ歌というものをⅡ
17 The Bosporus , Istanbul イスタンブール
歌:マリーヤ・コールニヴァ
青木菜穂子(ピアノ)任炅娥 (イム・キョンア) (チェロ)小沢あき(エレキギター・エレキベース)大塚惇平(笙)河崎純(コントラバス、コンピューターほか)小森慶子(クラリネット、サックス)近藤秀秋(ギター)立岩潤三(ドラムス、打楽器)Tamuran Music(シンギングボウルほか)崔在哲(チェ・ジェチョル)(韓国打楽器)中澤沙央里(ヴァイオリン)松本ちはや(打楽器、マリンバ)八木美知依(箏渡部寿珠(フルート・ピッコロ)セルゲイ・レートフ(サックス)ヌルヒャン・ラフムジャン(ドンブラ)
弦楽四重奏: 1stヴァイオリン:髙橋奈緒 2ndヴァイオリン:高岸卓人 ヴィオラ:森口恭子 チェロ:山本徹
声:サインホ・ナムチラク、 吉松章、坪井聡志
作曲・編曲 河崎純